Round5 Match3 Game1 USG vs DFM
DFMはここまで7hに不覚を取り、1ゲームを落とした所以外では全勝という王者の貫禄を見せ付けてきた。一方でUSGは「さすがLCK1部のADC」――その最大級の賞賛と今でもなおダントツのキル数という実績を以って、瞬く間に「Gango」という名前を日本のファンたちに知れ渡らせた。
そんなGangoが引っ張るUSGと、王者のDFM。この対決は個人的にPGM vs DFMよりも注目しているカードだった。なぜならば、GangoとYutapon。この二人がいたからだ。
そんなGangoが引っ張るUSGと、王者のDFM。この対決は個人的にPGM vs DFMよりも注目しているカードだった。なぜならば、GangoとYutapon。この二人がいたからだ。
■GangoとYutapon、究極のADC対決
LJL史上最高のADC。そう呼ばれつつあるGangoと、ここまで堅実な活躍をしているものの、これまでの華々しい活躍と比べるとぴりっとせず不調説すら浮上していたYutapon。「さすがにGangoの方が上だろう」「Gangoと比べられるのは酷」――かつて日本一のADCだったYutaponに対して、視聴者たちはそのような言葉を交わしていた。
Round5時点の戦績としてはこうだ。さすがに1回敗北を喫しているUSGと全勝のDFMではKDAに差があると思いきや、Yutaponの10.38にGangoは10.30と僅かな差まで肉薄している。
KP%(Kill Participation、キル関与率。チーム全体のキルに対するキルおよびアシストの割合)は「Gangoのチーム」と呼ばれているだけあり、ダントツの84.43%を残している。100キル中84キルはこのGangoが関与しているということになる。
DPM(Damage Per Minute、1分ごとのダメージ)でも100という差をつけて突き放している。30分であればYutaponの平均22,709ダメージに対しGangoは平均25,540ダメージと結構な差があることが分かる。
そんなGangoに対し、DFMはどのような戦略をとるのだろうか。ADCの介入する余地を与えさせないのか、あるいは――
KP%(Kill Participation、キル関与率。チーム全体のキルに対するキルおよびアシストの割合)は「Gangoのチーム」と呼ばれているだけあり、ダントツの84.43%を残している。100キル中84キルはこのGangoが関与しているということになる。
DPM(Damage Per Minute、1分ごとのダメージ)でも100という差をつけて突き放している。30分であればYutaponの平均22,709ダメージに対しGangoは平均25,540ダメージと結構な差があることが分かる。
そんなGangoに対し、DFMはどのような戦略をとるのだろうか。ADCの介入する余地を与えさせないのか、あるいは――
■バン・ピックフェーズ(前半)――狙いが明らかなUSGと見通しが立たないDFM
1.ファーストバンフェーズ
- USG:ナー、オーン、ジグス
- DFM:ゾーイ、カリスタ、ガンクプランク
USG側はナー、オーン、ジグスとEvi、Cerosらの得意チャンピオンを消した形だ。一方でDFMはモストバンのゾーイ、Gangoに使わせてはいけないカリスタ、そしてapaMENの得意チャンピオンであるガングプランクをバンした。
ジグスはCerosにしかされていないバンではあるものの、これまでCerosがピックした試合は非常に高い勝率を誇っている。世界的に知られているポケットピックであるCLG huhiのオレリオン・ソルと同じ扱いを受けているのだから、誉れと言えるだろう。
しかし、ここまで30回の機会で25回バン、4回ピックとBP97%を誇るガリオをDFMがあえて空けた理由を察することはできなかった。ファーストピックはUSG側であり、GangoというADCを活かすには最高のミッドレーナーと言っていいガリオをなぜ――その答えを、数分後に知ることになる。
2.ファーストピックフェーズ
- USG:ガリオ、ジャーヴァン四世/トリスターナ
- DFM:カミール/ヴァルス、ブラウム
これを受けてUSG側はやはりファーストピックにガリオを選択。ミッドレーナーでは唯一のタンクメイジであるガリオは、豊富なCCとUltによってチームを守り、またイニシエートにも長けているチャンピオンである。Gangoを活躍させるにはうってつけと言えるだろう。
DFMはカミール、ヴァルスを選択。カミールはEviの得意チャンピオンであり、ただ一人で相手チームをあざ笑うかのように試合をぶち壊していく悪魔のようなその様は敬意と畏怖を以って"エビール"と呼ばれるほどだ。
ここで私が不思議に思ったのがヴァルスだ。もちろん、メタの主流であるヴァルスは悪い選択ではない。だが、ガリオが見えている時点で次にジャーヴァン四世をピックするのは明らかで、ブリンクがないADCだとジャーヴァン四世のEQ+UltからのガリオのUltはフラッシュしか逃れる術はない。
ジャーヴァン四世を取り上げるか、あるいはエズリアルでかわすか。私の予想としてはこの二つだった。ヴァルスで一体どのように対応するのだろうか。
ジャーヴァン四世を取り上げるか、あるいはエズリアルでかわすか。私の予想としてはこの二つだった。ヴァルスで一体どのように対応するのだろうか。
次のピックではUSGは当然ながらジャーヴァン四世、次にトリスターナをピックした。この意図としてはガリオ+ジャーヴァン四世の黄金コンボ、そしてCD解消するブリンクで二人のイニシエートに合わせられるトリスターナ、ということなのだろう。
それに対するDFMのサードピックはすかさずブラウムを選択。明らかにGangoのトリスターナを抑えつけようとする狙いが見える。しかし、それではガリオ+ジャーヴァン四世を防ぐにはまだ弱い。
――この時点では未だにDFMの狙いが見えないでいた。
――この時点では未だにDFMの狙いが見えないでいた。
■バン・ピックフェーズ(前半)――For The Gangoに対してProtect Yutaponという鬼手
3.セカンドバンフェーズ
- DFM:タムケンチ、タリック
- USG:ハイマーディンガー、セジュアニ
Cerosのポケットピックであるハイマーディンガー、そしてセジュアニをUSGはバンした。世界広しといえど、敬意をもってハイマーディンガーがバンされるのはCerosしかいないだろう。
一方でDFMはタム・ケンチ、タリックとサポートを消す選択をした。いずれもチャンスメイクしつつもADCを守ることに長けるサポートだ。特にタリックはガリオ+ジャーヴァン四世にマッチするスキルセットを持つことから当然と言える。
カミール、オーン、ナー、ガングプランク。これらが全て消えたことで、USG側がピックできる残りの主なトップレーナーはサイオンかあるいはチョガス、シェン、マオカイぐらいしかいない。それもあってか、両方ともトップには一切触れていない。
4.セカンドピックフェーズ
- DFM:カルマ、サイオン
- USG:アリスター/チョ=ガス
カルマをピックした瞬間、「その手があったか!」と思わず膝を打った。私は忘れていたのだ。カルマというミッドレーナーを。
どんな対面でもQによるプッシュで安定したレーニングが約束され、集団戦ではアテネの血杯・アーデントセンサーによるシールドでADCを支える――プロテクトADCという構成において、中核となる役割を担うのがミッドカルマだ。
無論、欠点はある。ダメージディーラーというミッドレーナーとしての役割を担うことができずダメージが足りなくなるだけでなく、カルマというチャンピオンが見えた時点で「プロテクトADC構成」という目的が看破されてしまい、対策をとられやすくなるのだ。
だが、この時点ではもうUSG側は対策のしようがない。序盤の試合運びを担うジャングルはジャーヴァン四世であるし、対面となるミッドもガリオだ。そう、必然的に「エンゲージ構成」しかできないのだ。
さらに、ガンクプランク・カミール・ナーが消えたことでダメージを出せるトップレーナーがフィオラ以外に存在しない(やろうと思えばクレッドなどがいるが、高いレベルで扱えるプレイヤーはいない)。
かといって、日本最強のトップレーナーたるEvi相手にフィオラという選択はハイリスクすぎるし、何より集団戦で力を発揮しにくい。
こうしてUSGはタンクのアリスターとチョ=ガスをピックした。タンクとCC。GangoというADCの肉壁としては最高のチャンピオンたちだ。
ダメージディーラーがトリスターナしかいないものの、このタンクとCCで彩られたエンゲージ構成――まさしくFor The Gango、Gangoのためのチームにおいて、Gangoならば間違いなく最大限のダメージを叩き出すことだろう。……あるチャンピオンがいなければ。
最後にDFMはどんなジャングラーをピックするのだろうか。プロテクトADCであれば間違いなくタンクの存在は必要だ。それも十分なCCを持ったタンクが。
この条件であればセジュアニだが、バンされている。ではザックか?否、イニシエートに特化したジャングラーはプロテクトADCにはそぐわない。
一体どうするというのだ――? そんな私の考えにシンプルなアンサーをDFMは突きつけた。
サイオンである。そう、ファーストピックのカミールをジャングラーに置き、トップにサイオンという素晴らしいタンクを抜擢したのだ。
これで最後のピースが完全に埋まったと言っていい。かくして、DFMのプロテクトADC――Protect Yutaponは完成した。
For The Gango、Gangoのための構成。Protect Yutapon、Yutaponのための構成。これはまさしくGangoとYutaponの一騎討ちである。DFMはあえてUSGにとって最高の構成をさせ、それに対するカウンターのピックをしたのだ。
これだ、これだ。私が求めていた"熱さ"がここにあった。バンピックの段階でここまで熱い気持ちになれたのは初めてだった。
■試合最序盤――今後の展望とDFMの奇襲、布石
熱いバンピックが終わり、待ち望んだ試合が始まる。エンゲージ構成であるUSGはカルマがアテネの血杯およびアーデントセンサー、そしてヴァルスがグインソー・レイジブレードとウィッツエンドまたはルインドキング・ブレードを手にするパワースパイクまで決着をつけたいところだ。
エンゲージ構成の強みは問答無用で津波のごとく相手チームを飲み込むイニシエート、そしてネクサスまで雪崩れ込むことができる勢いだ。ジャーヴァン四世のEQ、Ultの2連続ブリンクによる強力なエンゲージにUltで自由自在に合わせることができるガリオ。このコンビはエンゲージ構成において最高のピックである。
そしてプロテクトADC構成はこのエンゲージ構成に強いとされている。なぜならば、エンゲージという荒波を防ぐ防波堤であるシールド、ピール手段があるからだ。今回の構成ではカルマ、ブラウム、サイオンがそれぞれシールド、ピールの役割を担っている。
エンゲージ構成の強みは問答無用で津波のごとく相手チームを飲み込むイニシエート、そしてネクサスまで雪崩れ込むことができる勢いだ。ジャーヴァン四世のEQ、Ultの2連続ブリンクによる強力なエンゲージにUltで自由自在に合わせることができるガリオ。このコンビはエンゲージ構成において最高のピックである。
そしてプロテクトADC構成はこのエンゲージ構成に強いとされている。なぜならば、エンゲージという荒波を防ぐ防波堤であるシールド、ピール手段があるからだ。今回の構成ではカルマ、ブラウム、サイオンがそれぞれシールド、ピールの役割を担っている。
しかし、DFMはカルマとヴァルス二人のパワースパイクまで耐えねばならない。ガリオ+ジャーヴァン四世は理不尽なまでのガンク力を誇るだけでなく、局地戦・カウンターガンクにも優れるコンビだ。DFMは仕掛けることもできず、かといって仕掛けられないようにしなければならない。
両者ともADCを主役とした構成だが、この試合のキーパーソンは間違いなくGariaruのガリオとTussleのジャーヴァン四世だ。この二人がどれだけ試合を動かせるかによって勝敗が決まると言ってよいだろう。
ブラウムの圧力によるDFMのLv1インベート(画像をクリックでTwitch Clipへ) |
その試合はいきなり動いた。ViviDのブラウムのパッシブであるスタンを活かしたインベートにより、見事にボットレーンの二人のフラッシュを消費させただけでなく、悠々と赤バフを強奪してのけたのだ。
こうしてTussleは青バフまで真っ直ぐ移動した上にソロで狩らざるを得なくなり、序盤のアドバンテージはStealに大きく傾いた。さらに私の注目を大きく引いたのがこのワードだ。
こうしてTussleは青バフまで真っ直ぐ移動した上にソロで狩らざるを得なくなり、序盤のアドバンテージはStealに大きく傾いた。さらに私の注目を大きく引いたのがこのワードだ。
これは1:15にStealが置いたワードの残滓、ゾンビワードだ。赤バフをスティールしたことで相手が取るであろう行動は「青バフから敵陣の赤バフへ取りに向かう」ことである。これを見透かしたかのように鎮座しているゾンビワードを見て、思わず身震いをした。ここまで読んでいるというのか――?
しかし、このハイリスクな赤バフはかなり消耗したTussleの眼中になく、この時は蟹ことリフトスカトルを狩るに留まったが、用意周到な布石に舌を巻いたものだ。
さて、序盤のアドバンテージを奪われてしまったTussleはガンクをしなかった。否、できなかったと言うべきだろう。
赤バフがないのもそうだが、万が一Stealと鉢合わせてしまったら火を見るよりも明らかな敗北が待っている。下手に動くことができない状況なだけに、大人しくファームを選択した。
■試合序盤――"魔術師"Stealによるゲームの支配
ジャングラーの状況、そして消えたフラッシュ――USG最大の強みであるボットレーンは厳しい戦いを余儀無くされた。
トップもまたガンクという唯一の懸念が遥か彼方へ消え去ったEviがピチピチと伊勢海老が飛び跳ねるようにプッシュし続け、ファーストリコール時点でのCSはapaMENの27に対し、Eviは36。1ウェーブ半もの差がついてしまった。
そうなれば必然的にゴールド差が生まれ、apaMENが購入できたのはルビー・マナクリスタルなのに対しEviはカタリストを購入していた。
こうしてapaMENは常にタワー下にまで追いやられ、CS差はさらに広がっていくことになる。
ボットレーンも同様で、ADCのファーストリコール時点でGangoの61に対しYutaponは72。2ウェーブ近くの差である。ミッドこそ互角だが、ここまで8分という時間でファーストブラッドが生まれていないほど動きがない。
なぜUSGは動かなかったのだろうか? そう、一週目の時と同様にTussleは動けなかったのだ。それは"魔術師"たるStealの視界確保によるゲームの支配をおいて他にない。
2回目のリコール、Tussleはトラッカーナイフを購入した際にトリンケットをスイープレンズ(いわゆる赤トリンケット。以下赤トリンケットと呼称する)に変えた。
ワードはトラッカーナイフがある上にガンクを狙うジャングラーなのだから当然といえば当然なのだが、一方のStealはあえてワードトーテムのままジャングルを回り続けた。
もちろんTussleも負けじと赤トリンケットでワードを壊していくものの、それを上回る頻度でワードを置いていく。カミールというガンクに重きをおいたジャングラーらしくない動きだ。だが、それはUSGにとって何よりも効果的だった。
このワード量。さしものTussleもこれではガンクができずファームするしかなかった。 |
TussleはEntyと共にDFMのジャングルにワードを置きに向かい、チョ=ガスのテレポートから五人体制でのガンクを狙うものの、StealとViviDは的確にその芽を摘み取っていく。
プッシュに優れるさしものガリオもカルマのプッシュ力には敵わず、ミッドレーンから離れられないでいた。チョ=ガスもまたサイオンの暴力的なプッシュ力にタワー下でファームするしかなくなり、少しずつCSをこぼしていく。
視界の主導権をとろうとしても、その度にStealが摘んでいく。そうして、USGはとうとう得意の局地戦すら起こすことも出来ず全レーンでCS差をつけられ、不利を背負うことになってしまった。
14:00時点のスコア。いずれのCSも20近い差がつけられていることが分かる。 |
■試合中盤①――千載一遇の好機に見えた場面、だがそれも計算尽く
十八分。無常にも何事もなく時は過ぎてしまった。DFMの"魔術師"に視界をコントロールされ、常にプッシュされ続けているUSGはオブジェクトを巡る戦いという舞台に参加する権利すら与えられないでいた。
しかし、ここで千載一遇の好機が訪れた。DFMがドラゴンを触り始めたのである。その背後にはワードがあり、チョ=ガスもちょうどリコールの準備をしている。待ち望んだ集団戦の導火線である。
――だが、その"千載一遇の好機に見える場面"もまたDFMの手のひらの上だった。チョ=ガスのテレポートは残り数十秒のCDで飛べない上に、ガリオ・アリスター・ジャーヴァンの位置がミッド側なのに対しトリスターナはボット側と孤立してしまっている。
さらに、DFMはカルマがアテネの血杯、ヴァルスがグインソー・レイジブレードを完成させており、一つのパワースパイクを迎えている。サイオンもリコールしており、チョ=ガスより速いタイミングでテレポートもできる。
一方でUSGはトリスターナがインフィニティ・エッジを所持しているものの、今の時間では間違いなくDFMの方が上だ。功を焦り無理矢理火蓋を切れば返り討ちにされることは見えている。
あえて見逃したUSG。これも一種の英断と言える。 |
……こうして、USGは好機に見える罠をあえて見逃し、DFMはフリードラゴンを獲得した。USGの残る道はトリスターナがスタティック・シヴ、そしてラピッドファイアキャノンといったコアビルドを購入し、ダメージを出し切ってもらうしかない。
まさかのスニークバロン参加失敗。PLZ Yutapon(画像をクリックでTwitch Clipへ) |
Yutaponがスニークバロンの参加に失敗するという珍プレイの場面(PLZ Yutapon!)もあったが、その直後にTussleが気づきこの失敗は結果的に正解となった。ここまで読んでいたとはさすがYutaponである(手首にエンジンがかかる)。
つまらない冗談はさておき、このハプニングを除いて何事もなくファーストドラゴンから6分経過した。
■試合中盤②――機は熟した。これが"天才"たる所以
25:40。DFMがセカンドドラゴンに触れ始めた。ファーストドラゴンではその舞台にUSGは立つことができなかったが、今回は違う。ガリオがモレロノミコン、トリスターナがスタティック・シヴと二本目のジールを購入しており、パワースパイクまで近くなっている。立ち位置もチョ=ガスがボット側、それ以外はミッド側とDFMを挟み撃ちにする形になっている。
一体誰が火蓋を切るのか? Tussleのジャーヴァン四世か、はたまたEntyのアリスターか? この二人を予想していたが、その期待を裏切られることになった。
――Stealだ。"魔術師"がその杖を振りかざしたのである。カミールのEでドラゴン内の壁を越えてapaMENのチョ=ガスに向かい、ピックアップを狙ったのだ。
スタンは入らなかったものの、Eviが操るサイオンのUltもチョ=ガスに入りフォーカスを集めようとしたところでジャーヴァン四世がYutaponのヴァルス、Cerosのカルマ目掛けてフラッシュEQでイニシエートした。
カルマは逃したものの、見事ヴァルスを打ち上げた。それに反応してGariaruのガリオがUltを使用し、さらにアリスターもフラッシュインする。しかしすんでのところでヴァルス、カルマはフラッシュアウトでガリオのUlt、アリスターのQから逃れる。
この間チョ=ガスはViviDのブラウムによるスタン、カミールのEと連続してCCを受けてヴァルス、カルマまで届かない。
ジャーヴァン四世はそのままフラッシュアウトしたヴァルス、カルマ両方ともUltで閉じ込めることに成功し、ガリオもフラッシュインからのフルコンボでヴァルスに襲い掛かる。
そこにGangoのトリスターナも参加しようとしたが、サイオンのQで僅かな打ち上げを喰らい、さらにカミールのUltが襲い掛かる。これでトリスターナはヴァルス、カルマに猛攻を仕掛けることができなくなってしまった。
影のMVP Steal。カミールで見事トリスターナを抑えきった。 |
それを受けてアリスターとチョ=ガスはトリスターナのピールを選択。カミールを瀕死まで追い詰めつつも、ブラウムのQが当たりそのままトリスターナはスタン。その間にカミールは僅かなHPを残してEで離脱するが、トリスターナはそれを逃さじとWで追撃。その
ままカミールのキルに成功する。
カミールをキルし、Wで戻ってきたトリスターナ。しかしそこには…… |
意気揚々とCD解消したWで戻ってきたトリスターナだが、そこには惨劇が広がっていた。この時、カルマはアーデントセンサー、ヴァルスはルインドキング・ブレードを購入しており、待望のパワースパイクを迎えていたのだ。
ガリオのフルコンボで一気にヴァルスのHPを7割まで削ったものの、それまでだった。カルマのアテネの血杯、そしてシールドにより擬似的ではあるが一気にHPがフルにまで持ち直し、そのままアーデントセンサーにより大暴れをするヴァルス。
カミールがキルされると同時にガリオをキルし、パッシブの効果によりさらにASが上昇するヴァルス。チョ=ガス、ジャーヴァン四世、アリスターはヴァルスをなんとか食い止めようとするが、そこは斧を構えたサイオンで行き止まりとなっている袋小路。
アリスターは思わずQでそれを阻止し、Wでサイオンを吹き飛ばす。ジャーヴァン四世もEQの打ち上げをヴァルス、カルマに当てるものの、焼け石に水。これでヴァルスを止められる手立てはなくなってしまった。
――ここからはYutaponによる独り舞台であった。もはやYutaponを止められるものはいない。Wで戻ってきたトリスターナを尻目に、チョ=ガス、ジャーヴァン四世と一人ずつ虐殺していくヴァルス。その鋭い矢先はとうとうトリスターナに移り……
ここまで計算され尽くしたペンタキルは他にないだろう。(画像をクリックでTwitch Clipへ) |
かくして、Yutaponはペンタキルを祝福する声と共に、不調説を吹き飛ばして凱旋した。ADCという貧弱な身でジャーヴァン四世、ガリオらに目前に詰め寄られようとも、チームメイトを信頼した上でダメージを計算し尽して前に突き進む。これが"天才"たる所以か。
このままDFMはフリーバロンを獲得し、天秤は一気にDFMへ傾いた。このまま決着かと思われたが……
■試合終盤①――最高峰のWambo Combo、そして躍動するGango
優勢に思えたDFMだが、ボットのセカンドタワーで戦況は一変する。ペンタキル劇からわずか2分後、ボットのセカンドタワーで孤立したに見えたチョ=ガスをヴァルスがUltでピックアップしたところで、Tussleのジャーヴァン四世が正面切ってEQ、そしてUltで見事にYutaponのヴァルスを捉えた。
ヴァルスのフラッシュは2分前に使用しており、もう逃げられない。これ以上ない好機に、GariaruのガリオはUSGを救う英雄のごとく降臨した。
度重なるNerfを受けてもなお、最高峰のWambo Comboとされるガリオ+ジャーヴァン四世。 |
ガリオのUltの中心から逃げられなかったヴァルスは大きなダメージと長時間のノックアップを受け、さらにガリオのタウントまで受けてしまう。不運にもカルマはその場にいなく、シールドとアテネの血杯によるヒールを受けることができないままガーディアン・エンジェルを消費してしまった。
しかし、ジャーヴァン四世はすでに打ち倒し、ガーディアン・エンジェルによる復活の後にカルマのシールドとヒールさえあれば十分に挽回できる。それほどまでにプロテクトADC構成は強力なのだ。
――だが、天運はUSGに味方した。カルマがUlt Eによるシールドをヴァルスが復活するタイミングに合わせられず、復活直前にヴァルスと重なっていたブラウムに使用してしまったのだ。
これは痛恨のミスと言っていい。これ以上生命線であるヴァルスを守る手立てはなく、USGが一攫千金のキルをもぎ取った。
USG待望のシャットダウン! 反撃の狼煙が今、上がる。(画像をクリックでTwitch Clipへ) |
しかし、サイオンが尋常でなく硬い。ヴァルス以外が逃げ切るだけの時間を稼がれ、デッドはしたもののUSGの反撃はヴァルス、サイオンをキルするに留まった。
このわずか1分後、再び戦況が大きく動く。今度はミッドのセカンドタワーにフォーカスしたDFMに、Tussleのジャーヴァン四世が壁越しEQからのUltによる奇襲をヴァルスにかけたのだ。
フラッシュは未だに上がらず。しかも今度はカルマもろとも巻き込むことが出来るのだ。これはまさしくUSGにとって一条の光であり、かつてない勝機といえた。
ガリオのUltによるノックアップに合わせ、apaMEN操るチョ=ガスのQでCCチェインが入る。さらにサイレンスも入り、Gangoのトリスターナがロケットジャンプでとうとうヴァルス、カルマを射程に捉える。DFMにとっては絶体絶命の危機と言える状況だ。
完璧なWanbo Combo。DFM万事休すか? |
ここでStealのカミール、Eviのサイオンが素晴らしい動きをした。カミールはUltをトリスターナに放ち、トリスターナだけでなくUSGのフォーカスを自らに向かせたのだ。
その次はサイオンである。Ultで真正面から突撃し、ヴァルス、カルマに詰め寄ろうとしていたアリスター、ガリオにQで打ち上げるとそのままトリスターナ目掛けて猛進していく。
トリスターナはたまらずフォーカスをカミール、サイオンに向けざるを得ない。カルマのUlt EがYutaponに入り、一気に体勢を立て直すDFM。
Yutaponが自由に動く時間を作り出した――かに思えたが、ここで地味ながらビッグプレーをした選手がいる。
逆襲しようとするYutaponをブロックするビッグプレー。(画像をクリックでTwith Clipへ) |
Entyだ。リーグ・オブ・レジェンドを始めてから僅か10ヶ月でNAサーバーのチャレンジャーティアーに上り詰めた神童が、YutaponをアリスターのWで吹き飛ばしたのだ。そして、ガリオがEのノックアップとWのタウントでヴァルス、カルマをそのまま抑え続ける。
こうして生まれたYutaponの時間が活かされることはなく、分断されたカミール、サイオンがトリスターナによってキルされる。同様に孤立したガリオをDFMは打ち倒すものの、またしても1-2交換となった。
ここまでGangoはダメージを出し続けている。少しずつではあるが、天秤がUSGに傾きつつある。視聴者の私たちはそう考えていた。だが、よく考えるべきだったのだ。完璧なイニシエートを決めたのにも関わらず、1-2交換にしか持ち込めなかったという事実を。
■試合終盤②――"お前さんのための盾だ!"
34:20。この名試合を決着付ける集団戦が始まる。バロンへと繋がる道において、サイオンがジャーヴァン四世、チョ=ガスにQの打ち上げが決まる。それに呼応してカミールもEで飛び込むが、スタンはならず。ラピッドファイアキャノンを持ったトリスターナのたった2回の通常攻撃でカミールのHPが5割となり、たまらず退却し始める。
それを見たサイオンが殿を務めるように斧を構えるが、そこにチョ=ガスのQがサイオンに当たり、トリスターナが殴り始める。
この好機をUSGが逃すわけもなく、ジャーヴァン四世のEQを皮切りにイニシエートを開始する。対するDFMはブラウムのUltでピールしていく。しかし、ここでUSGが痛恨のミスをしてしまった。
トリスターナがうまく懐に入り込み、的確にヴァルスへ通常攻撃を入れていくがそのヴァルスにカルマのシールドが入っており、アーデントセンサーで強化されている。殴り合いは瞬く間にヴァルス優勢となり、すぐブラウムの盾が阻む。
そこはさすがGangoと言うべきだろう、取っておいたWですぐ離脱する――だが、その一連の動きにガリオが釣られてしまった。虎の子のUltを使ってしまったのだ。
泣きっ面に蜂、それもカミールのUltで阻まれる。元々削られていたカミールはチョ=ガスに捕食されるが、大仕事は果たした。
素晴らしいUltだった。ガリオのUltがないという事を除いては。 |
間もなくジャーヴァン四世のUltが完璧に近い位置で決まる。サイオン、ブラウム、ヴァルスの三人をUltの範囲内に入れたのだ。だが、ガリオのUltはもうない。ヴァルスは冷静にフラッシュアウト。それを一瞥したトリスターナはサイオンを殴り続け、難攻不落に思えたサイオンがとうとう倒れる。
3vs5。人数だけを見れば間違いなくUSG優勢だ。チャット欄で視聴者たちはGangoコールが上がっていた。だが、そのコールは瞬く間に塗り替えられることになる。
フラッシュアウトしたヴァルスを追うようにアリスターもフラッシュQを当て、そのままEのスタンを叩き込む。そこにフリーとなったトリスターナが迫る。もはやこれまでか。
――しかし、しかし。ここである言葉と共に一筋の光が走った。
トリスターナを阻む盾。トリスターナの攻撃によりブラウムのHPは約3割にまで減っていた。 |
"お前さんのための盾だ!"
フラッシュと共に満を持して構えられたその盾は、トリスターナにとって雲の上まで築かれた城壁に見えたことだろう。――そう、非常に強力に見えるUSGのエンゲージ構成はダメージディーラーがトリスターナしかいない。
まさしくGangoのための構成ではあるが、そのGangoがダメージを出せない環境だとどうしょうもない。GangoというUSGにとって唯一の望みをシャットダウンするのがこの盾なのだ。
ヴァルスを捉えたはずの弾丸が盾に弾かれる音が響いてゆく。カルマも同様にフラッシュでヴァルスへEによるシールドとヒールをもたらしていく。
アリスターが盾の存在に気づき、Wでずらすもヴァルスはそれを先読みしたようにブラウムと同じ方向へ移動しながら弓矢の嵐をUSGのタンクたちへ浴びせ続けた。USGのタンクたちではカルマのシールドに守られたヴァルスを打ち倒す術はない。
さらに不死身の戦士サイオンもまたパッシブによって復活し、トリスターナに張り付いた。
……かくして、小さな主砲はもう二度とヴァルスに届くことはなかった。
ヴァルスのHPが10割から減ることは一度もなかった。(画像をクリックでTwitch Clipへ) |
先ほどまでGango一色だったコールがYutaponへと移り変わって響き渡る。ペンタキルに次いでクアドラキルを獲得し、ミッドのサードタワー、そしてインヒビターを壊すDFM。USGに傾きつつあるように見えた天秤はDFMへと傾ききった。
■試合終盤②――プロテクトADCという構成の真価
試合はまだ終わっていない。ガリオ+ジャーヴァン四世のWambo Comboを完璧に決めきれば。カルマとブラウムにヴァルスを守る時間を与えさせなければ。いかにプロテクトADC構成と言えども荒波に飲み込まれることだろう。
それでもDFMはあまりにも用意周到だった。すでに封殺する布石は打たれていたのだ。
トリスターナを捉えんとしたカミールに素早く反応するガリオ。だがそれは撒き餌だった。 |
バロン周囲の視界を巡る戦いで、ほんの僅かにトリスターナが孤立した。その機を逃さず、カミールがEのブリンクからUltで閉じ込めた。それに素早く反応したガリオはUltでヘルプに入ると、DFMはすぐ引いてリセットする。まるで最初からそれが狙いだったかのように。
まずこれが一つ目の布石。そして、二つ目の布石は巧みなミニオンコントロールである。トップレーン・ボットレーンでミニオンがスタックしているのを見て、すぐさまバロンへプレッシャーをかけたのである。
さらにボットレーンにはサイオンの統率の旗によって強化された砲台ミニオンがいた。強化された砲台ミニオンに加え、この数。間違いなくセカンドタワーだけでなく、サードタワーまで壊されることは明らかだった。
スタックしたミニオンに加え、強化された砲台ミニオン。一瞬映ったそれは絶望の足音だった。 |
USGにとっては絶体絶命の状況だった。ガリオのUltがないこの状況において、集団戦を仕掛けたとしても9割は敗北する運命にある。かといって、このままバロン前で睨み合いをしたとしてもボットのサードタワー、下手すればインヒビターまでミニオンが到達してしまう。
圧倒的に不利な状況のままバロンを阻止し、ボットのタワーを失うか。ボットのタワーを守りに行き、バロンバフによる詰みか。まさしく将棋の王手飛車取りである。
どうする、どうする。その考えがまとまらないまま、冷酷にもDFMはUSGの焦りを煽るようにバロン周囲の視界を支配し、とうとうバロンに触れ始める。
ここでUSGが選択したのはバロンを阻止することだった。「バロンバフを取られたら、後は詰まれるだけだ」――その悲痛な言葉が聞こえてくるかのようだ。
孤注一擲。イニシエート手段であるアリスターとジャーヴァン四世に全てを託し、バロンを狩り始めたDFMへ進軍するUSG。だがDFMは待ってましたと言わんばかりに電撃のごとくバロンから離れ、一瞬にしてバロンのフォーカスを散らす。
そして、"天才"が乾坤一擲の一手を打った。チョ=ガスにUltを命中させ、穢れが連鎖する。敵を打ち倒さんと走り始めた猛牛はそれに気づくと、振り払うようにUltを使いWQによる猛進を仕掛けようとしたところで、連鎖した穢れが猛牛を捉える。――Ultを使うのが速すぎたのだ。猛牛はその場で誰もいない地面に拳を叩きつけてしまう。
穢れが連鎖していく。出鼻を挫くには十二分すぎるほどに素晴らしいUltだった。 |
その穢れはジャーヴァン四世も捉え、そのままトリスターナへと連鎖していく。ジャーヴァン四世は全てを擲ってEQの打ち上げをヴァルスに当てるが、DFMは鶴翼の陣のように広がり、突出したジャーヴァン四世を包み込むように包囲する。
ガリオはかろうじて後方に逃れることで穢れの連鎖から抜け出したものの、Ultがなく飛び込むことができない。連鎖が切れたタイミングを見計らい、突っ込もうとするがブラウムのUltにより時間を稼がれる。
そうこうしている間にジャーヴァン四世の体力はどんどん削られていく。ガリオがようやくEで突っ込んだその先には、討ち取られた敗残の将の姿が見えた。
――もはやヴァルスを止める術はない。一人、一人とヴァルスの手により射ち落され、そして最後の砦であるトリスターナも遂に捉えられてしまい膝を屈する。
決着。これ以上ない横綱相撲であった。(画像をクリックでTwtich Clipへ) |
こうして、DFMはUSGにとって、そしてADCのGangoにとっても最高の構成であるエンゲージ構成――For The Gangoを、Protect Yutaponという同じADCのための構成で圧倒する横綱相撲を取ってのけたのだ。
バンピック段階、そして試合運び。何もかもが詰め将棋の如く計算され尽くしたものだった。「チームとしての格が違う」……DFMがこの戦いを見る者へ、そしてUSGへ送るメッセージのようだった。
個人的なPOTMはSteal選手。素晴らしい視界コントロールは未だ健在である。 |
このMatchのPOTM(PLAYER OF THE MATCH)は華々しいペンタキルを獲得したYutaponが獲得したが、個人的にはStealを推したい。
計算され尽くしたバンピックが活かされ、中盤以降の集団戦を勝利できたのも、ガリオ+ジャーヴァン四世という暴力的なエンゲージを魔法のように封じ込めた"魔術師"Stealの存在がいてこそのものだったからだ。
USG側もGangoだけが奮闘していたように見えたが、Entyもまた素晴らしいプレイをしていた。最後の最後でミスをしてしまったものの、あの騒乱の真っ只中で的確に必要なチャンピオンへCCを入れていく様は"神童"と呼ぶほかにない。Gangoのサポートとしては最高のサポートだろう。
とても長くなってしまったが、それだけ私がこの名試合にどれほどの感銘を受けたのかをご理解いただけたと思う。
ここまで読んでいただいた皆様、そしてこの名試合を作り出してくれたDetonatioN FocusMe、そしてUnsold Stuff Gamingに感謝の意を表し、締めくくりたい。
了
読んでいるだけであの名勝負の熱さがひしひしと伝わってくる上にその時は気付かなかった名プレーを知ることが出来る最高の記事でした!素晴らしい!
返信削除ただの視聴者を越えたすごすぎるレビュー!
返信削除>コメントをいただいた方へ
返信削除コメントありがとうございます。それらの言葉を聞いてこの記事を書いた甲斐はあったと感じています。
不定期更新ではありますが、好きなように書いていきたいと思いますのでご愛読いただければ幸いです。