2018年6月19日火曜日

Patch8.11のプロシーンから見る「多様性」

■目次 

「ファンネリング」という戦術
ADCが消えた日
LoL史上最高の「多様性」
頭角を現したチャンピオンたち




 Patch8.11。
 このパッチによりLoLに類を見ない変化が訪れている。
 中でも特に目立ったのはミッドにサポートを置き、ジャングラーにファームを集めるファンネリング戦術であろう。これはLCKを始め、あらゆる大会で採用された。

 これは2018年4月の時点で中国において既に流行りつつある戦術だった。
 かの"裏の帝王"Dopaが何も出来ずイーに切り刻まれ、後日「対策の立てようがない」と言わしめる様が配信で世界中に発信されたのだ。



 この動画は少し話題になったものの、この戦術が普及することはなかった。

 それもそうである。

 この頃、中立クリープには「チャンピオンのレベルがモンスターより高い場合、1レベル差ごとに経験値が5%減少する」という仕様があったからだ。
 ジャングラーまたはミッドのどちらかに経験値とゴールドを集中させたところで、この仕様により相手のジャングラーやミッドとのLv差はそこまで生まれない。
 これに加え、ジャングラーもまたソロレーナーより速くLv3に到達でき、強力なガンクによる序盤の影響力が非常に強かった。
 まさしく試合の主役である。わざわざその主役をサポートのような引き立て役にするほどの価値はなかったのだ。

 こういった理由によって、ファンネリングを行うメリットが薄かった。

 しかし、Patch8.10によりジャングラーの力を弱める目的によって中立クリープの価値が著しく低下した。一方でリフトスカトル(通称蟹、以下は蟹と呼称とする)の価値が「ミニオンの1ウェーブ分+大幅なマナ回復+視界確保」と大きく上がった。

 これによりジャングラーは非常に苦しい戦いを余儀なくされた。ろくにLvが上がらず、序盤の影響力が大きく弱まったのだ。

 これらの変更だけでなく、「チャンピオンのレベルがモンスターより高い場合、1レベル差ごとに経験値が5%減少する」という仕様が削除された。
 これでファンネリング戦術を行うメリットである「Lv差」をいとも容易く生み出すことができるようになったわけだ。

 ジャングラーの影響力が弱まったのならば、いっそのことキャリーにジャングルとミッドの経験値・ゴールドを集めればいい――この結論に至り、ファンネリング戦術が広まるようになった。

カーサスのUlt「だけ」でHP10割から削りきられるエズリアル。
恐らくこの動画から広まったと思われる。(リンク先:Twitch Clip)


 主なファンネリング構成はヌヌカーサス、イータリックが有名だが、プロシーンでピックされたものとしてブラウムグレイブス、モルデカイザーイレリア、果てにはザヤラカンなども存在する。
 これらの共通点として、ファンネリングを行う対象の相方としてLvおよびゴールドを必要としないサポートが選ばれていることだろう。
 理由はごく単純で、ゴールドや経験値を片方に注ぎ込むため、Lvや装備がなくとも一定の役割を担えるチャンピオンが選択されているというだけの話だ。


 前置きが長くなってしまったが、このファンネリングの長所としては「経験値とゴールドを得られば得るほど強くなるキャリー」に尋常でないペースで注ぎ込むことができる点に尽きる。
 そうして順調に育ったキャリーに対して相手は真正面からぶつかることができない。成長するスピードが違う故に、こちらのキャリーが先にやられてしまうからだ。
 これまで通り悠長にファームをしていると、あっという間に手がつけられなくなってしまう。

 しかし対策も明確である。

 1.プッシュ力が強いミッドを置き、タワーにミニオンを押し付ける


 プッシュさえしてしまえば相手ジャングルへ入りこむ事ができる。ファンネリングによって成長スピードが速いとはいえ、序盤~中盤はそこまで強くはない。
 そこを狙い撃ちするためにプッシュ力が強いミッドは必須であろう。


 2.ピックアップが強いチャンピオンをピックする


 積極的に攻め込めるチャンピオン――ジャングラーであればノクターン、カミールなどをピックし、ミッドとともに速めに2vs2を行い、ファームする時間を与えさせなければよい。
 また、いかに育ったとはいえCCと共に火力をぶち込めばあっさり沈む。そういう意味では攻撃的なチャンピオンが望ましい。


 3.サイドレーンで「レーン強者」をピックする


 これはジャングラーとミッドが共にファームを行うため、必然的にガンクは来なくなる。「ガンクだけが弱点」とされるチャンピオン、つまりエイトロックス・ダリウスやソラカなどを安心してピックすることができるわけだ。
 特にボットレーンはこういったレーン強者をピックし、先にタワーを壊した後にミッドとスワップすることで相手にファンネリングする時間を与えさせないこともできる。


 4.試合を長引かせる


 そもそもファンネリング戦術の目的は「キャリーに経験値・ゴールドを早期に集め、速い段階で試合の決着を目指すこと」にある。いくら成長スピードが速いとはいえ、必ず頭打ちになる。
 よってうまく耐える構成を作り上げ、レイトゲームに持ち込めば2サポートとなるファンネリング構成側が不利になっていくことを狙うものだ。
 しかし、これは全体的に展開が速いメタであるため、まともな対策とはいえない。



 2018年6月19日現在、最高峰のリーグであるLCKでファンネリング構成は8回行われているが、ファンネリング構成同士となった3試合を除いて一切勝利を手にしていない。
 理由としてはやはり現在のメタが結果的にこのファンネリング戦術の対策となっているからだと考えられる。
 特にピック頻度が高いノクターンやカミール、ミッドイレリアなどは2vs2が非常に強く、育つ時間を与えさせないというのがLCKのアンサーなのだろう。




 これまでの歴史において、ソロレーンにはメイジ、ADC、果てにはサポートといった様々なチャンピオンが使われ続けてきた。

 しかし、ボットレーンに限って「ADC」以外のチャンピオンが存在する事はなかった。

 "モルデカイザー"、”ダブルレリック"という例外こそはあったが、それらは一過性のものでしかなく、ライオットの手によりボットレーンはADCのための神聖なる場所であり続けたのだ。

 ADCは装備を揃えれば揃うほど乗算的に強くなるロールであり、パワースパイクもインフィニティ・エッジ/クリティカルアイテムの2コア、あるいは3コアでこれはまず到達するものだ。
 スタティック・シヴやラピッドファイアキャノンなどのクリティカルアイテムやフリーフットワークの存在により、このパワースパイクに到達するまでにも一定の強さを持ち合わせていた。
 何よりも優秀なオブジェクト獲得力、これは他のロールには持ち合わせていないものだった。

 ……ADCが「EUスタイル」の中核として長年ピックされ続けてきた理由は上記の通りだ。

 そんなADCにとって最大の悲劇の始まりはPatch8.10に遡る。
 この時のジャングルの変更によりカミール、グレイブス、シンジャオ、ウディア、トランドル……これらに対抗できないタンクジャングラーなどの人権が無きに等しい状態となり、絶滅寸前にまで追い込まれた。
 その余波で蟹を巡る攻防に参加すべく、ミッドやボットレーンの顔ぶれも変わってきた。ミッドは少人数戦に強いアサシンが、サポートはフィドルスティックスやラカンなどが幅を利かせるようになった。

 こうして試合展開が非常に速くなり、カサディンなどのパワースパイクが遅いチャンピオンが姿を消す事態に陥った。

20180616時点の試合平均時間。チャレンジャー帯では24分となっている
引用元リンク:League of Graphs

 さて、そんな状況のさなかでPatch8.11によりADC全体にナーフが入った。
 その内容はスタッツの低下、そしてインフィニティ・エッジの変更、クリティカルアイテムのゴールド増加。いずれもADCにとって大打撃を与えて余りあるものだった。
 このナーフは一言で言ってしまえば、「パワースパイクが著しく遅くなる」のである。これに加え、フリーフットワークのナーフによりパワースパイクに到達するまでの強さも大きく削られた。

 泣きっ面に蜂とも言うべきだろうか、先述した通りに試合時間は非常に短くなっており、上記の24分という平均時間では2コアしか購入できない時間帯だ。
 2コアとなるとクリティカルADCはインフィニティ・エッジ、スタティック・シヴ/ラピッドファイアキャノン/ファントムダンサーといったクリティカルアイテムになる。

 しかしこの選択はまず取られない。
 何せ「24分で終わる」のである。

 10分~15分辺りの集団戦でほぼ勝敗が決まる現在の環境において、1コアで活躍できるビルドでなければ活躍は望めない。

 こうしてクリティカルに依存するADCは"パワースパイクに到達する"ということがなくなってしまったがために、絶滅寸前にまで追い込まれた。

 ではクリティカルに依存しないADCはどうか。
 初手王剣のルシアン、グインソーのカイサ・ヴァルス、マナムネ又はトリニティ・フォースのエズリアル、妖夢又はダスクブレードのミス・フォーチュンなど。

 これらのADCはかろうじて生き残るかに思えたが―ー





 ――生き残れなかったのである。





 ADCにとって神聖な場所であったボットレーンはある二つのロールによって完膚無きにまでにぶち壊されたのだ。


ADCが消えた日。2018.6.15に行われたLCKでADCがピックされたのはたった1回のみだった。
(リンク先:LCK Week1 Day5 AFS vs KT - BBQ vs GRF録画)

 それらはレリックという強力なサステインと、征服者というOPルーンを持ち出したブルーザー。そしてレーンニングでADCを圧倒してしまえるメイジである。いずれもたった一つのコアアイテムとLv9-11で一度のパワースパイクに到達し、少人数戦にも強いチャンピオンたちだ。

 これまでADCはこれらのチャンピオンに対して有利なレーニングが行えていたのだが、基礎ステータスの強烈なナーフ、そしてフリーフットワークのナーフによりそれが満足に行えなくなってしまった。
 またADCは通常攻撃をメインとする特性上、レベルよりも装備に大きく依存している。これはレベルによるスケールが大きいブルーザーやメイジらに取って代わられる理由となっている。


 非常に展開が速い現在のメタにおいて、ADCは文字通り"足手まとい"となってしまっているのが現状だ。

 ではADCの特権であったオブジェクト獲得力はどのように補っているのかというと、Patch8.9で実装されたタワーへのダメージにAPが乗るという仕様により、メイジで代用してしまえるのである。

 【6/26補足】
 タワーへのダメージにAPが乗るという仕様は誤りであり、正しくは「タワーへのダメージに乗るAPレートが50%→60%に増加および物理ダメージが魔法ダメージに変換」というものである。
 これにより、ソーサラージュース、モレロノミコン、ヴォイドスタッフなどの魔法防御貫通アイテムを持つことでオブジェクト獲得力が大きく上がるようになった。
 この場を借りてご指摘のコメントをいただいた方に感謝の意を表する。


 かくして、ADCの存在意義は無に帰することになり、「ADCが消えた日」が訪れた。


 LCK Week1 Day5でのAFS vs KT、BBQ vs GRFの合計6試合においてADCがバンされたのはルシアンの2回、エズリアルの1回のみ。ピックに至ってはヴァルスのたった1回であり、それも敗北してしまっている。
 もはやボットにADCの居場所は存在しない――そんな言葉が聞こえてくるかのようだった。




 私達は今、8年間途切れることがなく続いていた「ADC」が消滅する様という歴史的な瞬間を目撃している。
 8年間続いてきたEUスタイルが消えるのか。それとも、息を吹き返すのか。
 これからどういう道を辿るにせよ、これはLoLの歴史において大きなターニングポイントとなるだろう。

 そんなADC不在のメタだが、皮肉にもLoLの歴史において最も多様性に富んだメタと言える状況である。鉄板と言える構成が存在せず、あらゆる可能性が秘めている。


 ▼H2Kのポーク構成

EU LCSでH2Kが見せたカルマ+ゾーイの"ポーク構成"
(リンク先:Youtube)

 例えばEU LCSでH2Kが見せたこのポーク構成では、ADC枠にカルマを置くことでゾーイ+カルマという強力なポークを実現している。
 ポークで削ったところでオーン+ノクターンのコンビが刈り取るねらいだけでなく、こういったポーク構成のカウンターにもなり得る二人を先に取ることでさらに強みを活かしたピックとなっている。



 ▼FNCのファンネリング+プロテクトADC構成
FNCの"ファンネリング+プロテクトADC構成"。まさしくFor The Capsだ。
(リンク先:Youtube)



 同じくEU LCSでFNAが見せたファンネリング+プロテクトADC構成。MSIにおいて韓国・中国・台湾の強豪ミッドレーナー相手に大立ち回りをしてのけたCapsに全てを賭けるものとなっている。
 ファンネリングの対象となるチャンピオンはADCであるカイサ。先述したパワースパイクに到達する前に大勢が決してしまうのならば、ファンネリングによってそれを早めればよいという考えの下に構成されている。

TF/シェン+カミールのコンビにより3デッドするも、16分で黄エンチャントとグインソーが完成。
これがファンネリング最大の強みだ。

 この構成を初めて見た時、EU最高のADCとまで謳われていたRekklesにサポートチャンピオンを使わせるという衝撃たるや、天地がひっくり返るようだった。
 ファンネリングにプロテクトという要素をさらにプラスした挑戦もさることながら、試合展開も全てが計算され尽くした素晴らしいものであったので是非見てみてほしい。



 ▼FOXのブルーザー構成

FOXのブルーザー構成。前人未到の"フィジカル"がLoLを支配する!
(リンク先:Youtube)

 NA LCSでFOXが見せたブルーザー構成。この世は暴力、そしてフィジカルこそが正義と言わんばかりのパワーがピック画面からひしひし感じてとれる。
 ちなみにこれはムンドがトップ、ヤスオがボットである。トップレーナーであるHuniがボットレーンへ向かい、ADCとしてデビューした姿も話題となった。(噂によればHuniはかつてADCメインだったそう)

世はまさに世紀末――暴力の嵐がWildTurtleに襲い掛かる!さしものWildTurtleもこの顔。
(リンク先:Twitch Clip)

 全員が驚異的な硬さを誇るだけでなく、ヤスオ・イレリア両者とも選択した征服者ルーンによって火力も十分。レンジドどころかメイジすら不在の構成だが、それでも通用してしまう辺りこの環境のカオスさがよくわかる。



 ▼Gen.Gの対イータリック構成
GENの対イータリック構成。ADCを意地でも使う姿勢を見せた。
(リンク先:Youtube)


 数あるファンネリングの中でも「完成されている」と言わしめるほどのイータリックだが、GEN(元KSV)が一つのアンサーを叩き出した。イータリックに対してミッドブラウム・タリヤをぶつけたのだ。
 ブラウムはパッシブのスタン、Ultのノックアップによりイーに対して強力なCCを与えることができる。また、Flyはミッドブラウムをいち早く発見し、韓国のソロキューに流行らせたと言われる第一人者でもある。

強引なイニシエートでダブルキル。これがイータリックの力か。
(リンク先:Twitch Clip)


 GENはタリヤ・アッシュのプッシュ、シージによりマクロ面で優位に立ち続けた。イータリックの破壊力に膝を屈する場面は見られたが、それでもオブジェクトに繋がらない辺り流石である。
 ブラウム・ジャンナのピールにより時間を稼ぎ、アッシュを犠牲にファンネリングの対象となったタリヤがフリーとなり最終的に勝利を手にしている。


確かにイータリックは強力だった。だが、無敵の時間を稼がれてしまっては……
(リンク先:Twitch Clip)


 Gen.GのRulerは現メタを「下手だからマークスマンを避けているだけ。実力さえあれば十分使える」と豪語しており、実際にマークスマンを全試合ピックして敗北したのはKogのみ。
 ADCが消えたとされるメタになってもなおADCをピックし続けると思われるGENは今後、注目すべきチームであると言える。



 ▼ダリウス


 トップレーンの番長として名を馳せこそすれ、プロシーンにおいては一切選択肢に上がらなかった男が現環境においては悪くない選択肢として上がっている。
 その理由としてはレーンの強さもさることながら、征服者およびトリニティ・フォースとの相性が良く、パワースパイクが早い事も評価されていると考えられる。
 ダリウスが苦手としていたADCや純粋なメイジの優先度がかなり低くなっており、またブルーザーが蔓延っていることから、集団戦が長くなる傾向にある。
 その最中で生命線であるQを最大限に活かすことができる環境なのも追い風だろう。


 ▼マスターイー


 ファンネリング戦術の祖であり、イータリックはファンネリング構成の中でも特に完成されたコンビと高い評価を受けている。
 先述したGENの対イータリック構成でもイーを止められなかった場面がしばしば見られたことから、突破力はトップクラスと言える。イータリックへの対抗策を打ち立てることは急務であろう。
 かなり警戒されているものの、他にもバンすべきチャンピオンが多いため今後もピックされる機会は出てくるだろう。


 ▼タリヤ


 生命線であったQがAoE判定から単体判定となる致命的なナーフを受けたが、一方で単体に対するダメージは倍近くになったことから"ジャングルの女王"としてカムバックすることになった。
 クリープ処理の速さもさることながら、パッシブの存在により靴なしでMS400にまで上ることで序盤から大胆な動きも可能としている。
 また、射程差によりジャングルの帝王たるグレイブスに対する有効なカウンターになっている上、タリヤに対する明確なカウンターが存在しないため、ファーストピックの候補にまで挙がっている。
 この女王に対抗できるジャングラーは、タリヤ唯一の弱点である「飛び込まれると弱い」という点を突くことができるカミール・ノクターンぐらいだろう。


 ▼ノクターン


 個人的に意外だったのがこのノクターンだ。
 Ultによる強力無比なガンクという強みはあれど、トランドルのように集団戦で強いわけではなく、アサシンジャングラーという特性上腐ってしまう時間帯も早い。それ故にプロシーンで顔を見る機会は滅多になかった。

 しかし、ボットもテレポートを持つようになった事で、ノクターンのUltにより「相手にテレポートさせない」という副次的な効果がさらに価値を持つようになった事が大きく評価されているようだ。
 ボットへのガンクにおいて、こちらのトップがテレポートを詠唱すると同時にノクターンのUltを使用することで、相手のトップにテレポートをさせず強制的に人数差を作り出すという戦術が強力である。

 また、これまで記した通り、現在の環境は「パワースパイクが早いチャンピオン」が重要視されている。そしてノクターンはLv6で一種の大きなパワースパイクを迎え、Ultによって少人数戦へ積極的に参加できる。これらを結びつけばこの活躍は必然であると言えるのかもしれない。


 ▼シェン


 人数差を作り出すUltだけでなく、ダッシュ+タウントのE、AoEのAAドッジのWとLv6以前でも存在感を示すことができ、これらは現環境においてどれもマッチしている。ブルーザーはいずれもAAの比率が大きいからだ。
 多くピックされているカミール・ノクターンとのシナジーも強烈で、試合展開を早める事も可能としている。
 サポートの常連であるアリスターに対して強いことで知られており、おそらくこの環境において最も出世したサポートと言えるだろう。


 ▼ルル


 かつてライオットから「サポートチャンピオンがソロレーンにまで進出してしまうのは健全でない」とされ、ナーフに次ぐナーフを食らったルルが帰ってきた。その理由としてはやはり未だに強力なサポート性能であろう。
 スロウ、ポリモーフ、シールド、ASステロイド、MS上昇、HP上昇、ノックアップ――あらゆるサポートを持つルルだが、最低限求められる火力も持ち合わせているため、2vs2性能は非常に高い。
 Qやパッシブによる一定のプッシュ力も兼ね備えているだけでなく、カミール・ノクターンといったジャングラーとルルのUltの相性がよい事もピックされている理由の一つとなっていると考えられる。
 しかし次のPatch8.12でシールドの効果時間が2.5秒になることもあり、ルルは短い天下となりそうだ。


 ▼モルデカイザー


 ボットレーンが大恐慌に陥る最中、かつての"帝王"が再びその座に就いた。
 ボットでのブルーザー同士の戦いではシールド+Wのヒールという二重の強力なサステイン、強烈なプッシュ力により常に優位に立つことができる。特にWのヒールは戦況をひっくり返すほどの回復量で、それが二人も回復するのだからたまらない。
 ドラゴンを獲得できれば随一のオブジェクト獲得力も得られる点だけでなく、氷杖を持ったWおよびUltはADC不在の今でも評価が高い。
 Qによるバーストも持ち合わせており、かろうじて生き残ったキャリー達を不気味な笑い声と共に叩きのめしている。


 ▼スウェイン


 ブルーザーが蔓延る環境によって正統派メイジの評価が落ち、倒すべきキャリーがいなくなってしまったことでバーストメイジが鳴りを潜めた今、スウェインはかなり有効なピックとなっている。
 時たまミッドに顔を出すものの、主にボットとしてピックされている。装備依存はやや強いものの、E・パッシブによるガンク合わせは強力でスノーボールの起点になりうる。
 また、Ultによる粘り強さとライアンドリーの仮面の組み合わせはブルーザーに対しても有効な対抗策となっている。


 ▼ブラッドミア


 ボットで最もピックされているであろうメイジ。スウェインと同じくブルーザー相手に強く、かつ弱点である正統派メイジ・バーストメイジが不在のためバン・ピック頻度が非常に高くなっている。
 ノーマナかつ優秀なサステインから生まれるレーン維持力は五指に入るほどで、初手スペルバインダーの時点でも集団戦において存在感を発揮することができる。
 キャリーが息を出来ない大きな原因の一人だろう。


  ▼ライズ

 ボットレーンに現れたメイジの一人。ライズは特殊なUltを持つため他のメイジと比べてLvに依存しているわけではなく、またマナおよびAPでスケールするスキルという特性上、装備に大きく依存している。
 ビルドパスもRoA+セラフ・エンブレイス(通称涙杖)の2コアとパワースパイクも遅いことで知られており、どことなくADCと似たような印象を受ける。
 しかし、マナ・AP・CDとライズに必要なスタッツが詰まっているセラフ・エンブレイスに直行することで、耐久力を犠牲にこれまでとは比べ物にならないほどパワースパイクが早まったのである。
 ミッドレーンにおいてブラッドに対して有効なピックとされたが、ボットへと戦場を移してもそれは同様だったようでブラッド相手にライズを当てるというピックも目立つ。


 ▼エイトロックス


 苦手としていたバーストメイジやマークスマンが不在のメタにおいて、恐らく最も出世したであろうチャンピオン。ピック率が急上昇し、2018年6月19日現在OPGGのTierでシンジドを抑えて一位の座に座っている。
 フィオラ、カミールらのスプリッターの系譜を見事に引き継ぎ、タンクトップ相手に対する有効なピックとして評価を大きく上げた。
 また、タイタン・ハイドラとグインソーの組み合わせによる強烈なDPSはAP過多になりがちな現環境において有効なものとなっている。
 ようやく栄冠を奪還したエイトロックスだが、すでにリメイクの詳細な情報が出てしまっている。哀れ。


 ▼ドクター・ムンド


 長年メタになりうる可能性を秘めては消えていったあのムンドが遂に姿を現した。
 Ultが最大体力の40/50/60%から50/75/100%というヤケクソなバフにより、スピリット・ビサージュとサンファイアを持つだけで浮沈艦と化す。
 とはいえ、序盤は他のブルーザーと比べて強いとは言えないため、タンクトップに対して当てた上で順調に育てさせるという運用が必要になっている。
 装備が揃えば揃うほど手がつけられなくなっていくチャンピオンのため、AP過多の構成に対する制止力・切り札となりうる存在である。


 ▼ヤスオ


 ハンドスキルによって強さが大きく変動する特殊なチャンピオン。リヴェン・ヴェインらと並んで典型的なソロキューチャンピオンだったが、現環境でピック率を大きく上げている。
 新しいインフィニティ・エッジと征服者を合わせることでなんとダメージの大半がトゥルーになるのである。これが大きな追い風となったのだろう。
 ボットレーンに顔を見せることはあれど、やはりブルーザー相手には分が悪いためか、マークスマンなどが相手の場合に限り採用されているようだ。R.I.P.SoloQ

【6/26補足】
 ADCの全体的な弱体化に加え、ミッドパッチによりヤスオ自身のスタッツの強化、Qのクリティカルダメージ倍率増加などで序盤が強くなったことがピック率を上げている大きな理由のようだ。
 また、NA LCSで見られたブランド等のメイジに対して強い事も大きな理由となっている。
 この場を借りてコメントいただいた方に感謝の意を表する。


 ▼シンジド


 とうとうこいつが出てきてしまった。顔も見たくない。害悪は消えていなくなれ。


 最後に本音が漏れ出てしまったが、この混沌としたプロシーンは滅多にお目にかかれない。この歴史的と言える日々を楽しんでいってほしい。そんな願いをこめて本記事の締めくくりとしたい。

了  

2018年3月25日日曜日

個人的ベストバウト~LJL 2018 Spring Split Round5 Match3 Game1 USG vs DFM~

 Round9まで様々なドラマがあった。V3の素晴らしいマクロ力、PGM Gaeng・USG Gangoの際立つ実力、7hが抱える苦悩、DFM Eviの圧倒的な実力、RJ WyverNの魅せるアグッレシブさ――そんな中で特に感銘を受けた名試合を上げ、解説していきたい。

 Round5 Match3 Game1 USG vs DFM




 DFMはここまで7hに不覚を取り、1ゲームを落とした所以外では全勝という王者の貫禄を見せ付けてきた。一方でUSGは「さすがLCK1部のADC」――その最大級の賞賛と今でもなおダントツのキル数という実績を以って、瞬く間に「Gango」という名前を日本のファンたちに知れ渡らせた。

 そんなGangoが引っ張るUSGと、王者のDFM。この対決は個人的にPGM vs DFMよりも注目しているカードだった。なぜならば、GangoとYutapon。この二人がいたからだ。

2018年3月7日水曜日

LJLチーム紹介No.3 "Pentagram"

Pentagram(PGM)

旧名:Rampage(RPG)



出典:https://jp.lolesports.com/teams/pgm


【2017年戦績】
LJL 2017 Spring Split 2位
LJL 2017 Spring Playoffs 1位
LJL 2017 Summer Split 2位
LJL 2017 Summer Playoffs 1位


■チームメンバー

Top     :Shirou "Paz" Sasaki
Jungle  :Jang "Once" Se-yeong
Mid     :Osamu "Ramune" Ozawa
ADC   :Yuta "YutoriMoyasi" Noguchi
Support  :Yang "Gaeng" Gwang-yu


 チームの歴史としてはFMに次ぐ長さを誇る。前身は
myRevenge Rampage、略してmyR Rampageという名で2012年に結成した。当時ではコミュニティによる最大の大会であった「第四回LOL振興大会」で優勝したことを皮切りに、日本の大会シーンにおいてDFMと凌ぎを削りあってきた古豪である。
 シーズンでの勝率1位こそDFMに譲り続けているが、Playoffsという大舞台の強さにおいては無類の強さを発揮しており、三回連続でDFMを下した上で驚異の三連覇を成し遂げている。この三連覇によりIWCQMSIWCSへの切符を手に入れており、海外の日本に対するイメージとしては真っ先に上がるチームだろう。
 6年親しまれてきた名前であるRampageからPentagramにネームチェンジを行い、心機一転して前人未到の四連覇目掛けて2018年のLJLに挑む。




2018年3月6日火曜日

アリスター(Alistar)というチャンピオン

 リーグ・オブ・レジェンドの長い歴史において、個人的な好意を寄せているチャンピオンがいる。(怪しい意味ではなく!)
 かつて奴隷となり、闘士として戦わされた悲しき戦士――アリスターである。



 スキルセットとしてはQのAoE打ち上げ、Wのノックバック、Eのスタンと非常にシンプルなクラウドコントロールを持つ。極めつけには受けているCCを解除し、その上で被ダメージを大きな割合でカットするUlt。まさしく「タンク」という三文字を体言しているチャンピオンである。
 そんなアリスターはこのリーグ・オブ・レジェンドのサービスが開始した2010.7.13から存在している60体の一人であり、深い歴史がある。

2018年3月4日日曜日

LJLチーム紹介No.2 "DetonatioN FocusMe"

DetonatioN FocusMe(DFM)


出典:https://jp.lolesports.com/teams/dfm

【2017年戦績】
LJL 2017 Spring Split 1位
LJL 2017 Spring Playoffs 2位
LJL 2017 Summer Split 1位
LJL 2017 Summer Playoffs 2位


 2015 LoL Japan League Season 1・Grand Finals・LJL 2016 Spring Playoffsといった大舞台において驚異の三連覇を成し遂げ、王者の名をほしいままにしていたDFM。しかし、LJL 2016 Summer Season以降からは三回連続でRampage(現Pentagram)に敗北し、今年は王者の座から遠さがったリベンジャーとしての立場で臨んでいる。

 LJLが開催してから6回のSeasonにおいて勝率1位4回を誇る強豪であり、ここまで順調な道を歩んできたかのように見えるDFMだが、スターティングメンバーが定まらず悪戦苦闘し続けてきた歴史がある。


LJL チーム紹介No.1 "7th Heaven"

 はじめに、これらは全て袁術陛下の主観によるものであり、「こういった見方もあるのか」という程度に留めておいていただけると幸いである。


7th heaven(7h)



【2017年戦績】
LJL 2017 Spring Split 5位
LJL 2017 Summer Split 3位
LJL 2017 Summer Playoffs 3位



 LJLでの3年間(2015~2017)において、最も”中堅”という呼び名が似合うチームだ。順位は最高でも3位最低でも5位と非常に安定しており、下位のチームが這い上がるためには必ず超えねばならない壁と言えるだろう。
 一方で7hがこの中堅というポジションから抜け出すためには、PentagramDetonatioN FocusMeという分厚い双璧を打ち破る必要がある。
 さらには”三番手”というポジションもまたUnsold Stuff Gamingの台頭により危うくなっている。いまいち乗り切れないチーム――そういわれ続けて早三年。ここから抜け出すチャンスを掴みとれるか。